ささくれ備忘録

主に乙女ゲームの感想・考察を書いています。

BUSTAFELLOWS(バスタフェロウズ)スケアクロウ√考察

スケアクロウ√考察というか、彼の√で特に気になったことについてです。ここでのテウタの「時間を遡る能力」ってどんなものなんだろう?って感じのことを考察します。なのでスケアクロウ√考察というよりは、テウタの能力についての考察に近いかも。

スケアクロウ√の感想はこちらで書いているので、感想が読みたい方はどうぞ。例によってネタバレが多分に含まれていますので、お気をつけ下さい。

遙かなる時空の中で3・4(特にリズ先生、知盛、柊・忍人辺り)でもすごく気になって色々考えたことがあるんですが、こういった時間を遡る系の話って、平行世界的な話にもなってくるので解釈が大変厄介です。作品によってまた違った解釈で出てきたりもするし、卵が先か鶏が先かみたいな話になってくるともうこんがらがって理解が及びません。

遙か3では知盛、遙か4では柊が平行世界(あるいは、全てが始まる前の一番最初)でしか結ばれないキャラクターです。どんなに夏の熊野で過ごしたとしても、必ず目の前で「じゃあ、な」とか言って身投げしますし結局一緒になれるのはあの熊野で過ごした彼ではなく、戦が始まる前の望美のことを何にも知らない彼なんですよね。同じ人物であることには変わりないけど、共に過ごした経験も何も残っていない、こっちからしたら記憶喪失みたいな状態の知盛。柊も、彼を救うためには一番最初の出会いのところまで戻って迎えに行かなければならない。勿論、その柊も千尋との出会い以降の一切を知らない訳なので、本当の意味で一番最初に好きになった彼と結ばれる訳ではないというのが色々と切ないです。

前置きがめちゃくちゃ長くなってしまいましたが、今回考察していきたいのはそれとはまた違ったベクトルの話です。

遙か3・4を引き合いには出しましたが、BUSTAFELLOWSにおけるテウタの「時間を遡る能力」はかなり制限されて使いにくいものなので、望美の白龍の逆鱗を使った運命上書きシステムとは全くの別物です。

 そもそものテウタの「時間を遡る能力」について少しおさらいをすると、他人になって時間を遡る、というのが彼女の本当の能力です。あまり長い時間までは遡れなくて、せいぜいが数時間前くらいまで。自分になることは出来ず、過去に戻った先の他人を自分の意思で選ぶことも出来ないので、男だったり犯罪者だったり、連絡手段のない子供になったりします。一度に時間を遡れる回数も多くないようで、二回目で既に頭痛がしてくる描写があります。ゲーム本編では語られないものの、アニメイト特典小冊子のモズBAD後日談ではモズを助けるためにテウタは何度も時間を遡り続けます。しかし、現実世界でテウタは昏睡したような状態となっているので、時間を遡りすぎると体の方が持たなくなるということなんでしょう。

遡れる時間はあまり長くなく、見ず知らずの他人の体に入り、無事に遡れるのは原則一回くらいまで。こう考えると、かなり限定された能力です。私がこのテウタの能力で一番気になったのは、時間を遡って過去が変わった(あるいは未来が変わる)場合、その変えられた世界ってはたして元の世界と同じなのか?という点です。

クロちゃん√終盤、エンディングの分岐として二つの選択肢が出ますが、今回私が注目するのは「過去のクロちゃんに暗号の意味を聞く」という、ハッピーエンドへ辿り着ける方の選択肢です。

地下鉄での衝突を防ぐために、「衝突地点周辺を停電させる」ということを考えついたものの、長い文章を送ることは出来ない。そんな状況でクロちゃんはテウタの機転を信じ、過去の自分が分かるように短い暗号をテウタに送ります。正規の√ではテウタが無事過去のクロちゃんに暗号の意味を聞くことが出来、救出成功となる訳ですが、ここで色々と気になるのは「テウタが過去のクロちゃんに暗号の意味を聞いたことにより、現在のクロちゃんは過去にテウタから電話がかかってきたクロちゃんとなるのか、どうなのか」ということ。

この、地下鉄で自ら暗号を思いついてテウタに暗号を送ったクロちゃんを、便宜上クロちゃん(A)とします。クロちゃん(A)は、この時点でテウタから電話はかかってきていません。しかし、テウタが過去の時間を遡るのであれば、この過去のクロちゃん(A)に電話をかけて暗号の意味を聞くことになります。

このとき、普通に考えればテウタから電話がかかってきたクロちゃん(B)が発生します。クロちゃん(B)はテウタから暗号の意味を聞かれているので、自ら暗号を思いつく前に暗号を知ることが出来ます。電話がかけられたときは意味が分からなくても、そのままであれば地下鉄でクロちゃん(A)と全く同じ状況になるので、そこで暗号の本当の意味を理解してテウタに全く同じ暗号を送ることが出来る訳です。

整理すると、

クロちゃん(A)=テウタから電話がかかってきてないクロちゃん。自ら暗号を思いつく

クロちゃん(B)=テウタから電話がかかってきたクロちゃん。暗号を既に知っている

ということになります。

でも、スケアクロウ√本編を見ているとクロちゃん(B)の存在はないっぽいんですよね。テウタが過去のクロちゃん(A)に電話したのであれば、そのままクロちゃん(B)に変わってもおかしくはないはずなんですけど、地下鉄で暗号が届くことを祈っているシーンがあるので。クロちゃん(A)のまま話が進んでいるんです。クロちゃん(B)であれば、過去にテウタから電話がかかってきて暗号が無事届いたことを知っているはずなので、ここのクロちゃんは明らかにテウタから電話がかかってきていないクロちゃん(A)ということになります。

なんか自分でも書いてて訳分かんなくなってきた。

話はちょっと逸れますが、最近読んだ「プランダラ」という漫画でもこういったことがありました。詳細は省きますが、過去の出来事を知るために現在から過去へタイムスリップした先で、未来(現在)に知り合うことになる人とも出会って、過去から現在へ戻った後再会することになります。本来は過去で出会うはずがないため、「元々あった本来の記憶」と「タイムスリップしたことで増えた記憶」の二つが存在するような台詞がありました。

でも、このクロちゃん√ではそれともまた違うみたいです。クロちゃん(A)のまま、テウタから電話がかかってきた記憶を薄ら所持しているって訳でもない。じゃあ、テウタは一体どのクロちゃんに電話をかけたのか?

テウタの時間を遡る能力によって、私は最初クロちゃん(B)が発生するのだと思っていました。でも、ゲーム本編を見るにそれは存在せず、最初から最後までクロちゃん(A)でしかありませんでした。これは一体どういうことなのか、自分なりに色々と考えた結果ひとつの結論に辿り着きました。

テウタやクロちゃんの世界線が切り替わったと考えると納得出来る気がするのです。

この「世界線」という言葉、作品によって様々な解釈がありますが私が今回参考にしたのはあの有名な「シュタインズゲート」です。大体の場合において複数の世界が平行して存在する、というのがよくある解釈ですが、この作品におけるパラレルワールド世界線の存在はちょっと特殊です。世界はただひとつの世界線に収束し、別の世界が同時に存在することはありません。世界線が移動する場合、前の世界は消えてなくなり、新たに世界が再構築される、というのが「シュタインズゲート」での解釈です。

ちょっと分かりにくいですが、スケアクロウ√で例えるのであれば「そのままだと地下鉄が衝突してしまう」というのが前の世界線。テウタが遡った時間がこの世界線だとして、この状態ではまだ世界線は変わっていません。クロちゃんに暗号の意味を聞き、停電という行動に移したからこそ新たな世界線に移動したと考えられます。このとき、「シュタインズゲート」の解釈なら前の世界線は消えてなくなるので、「テウタから電話がかかってきたクロちゃん」はいなくなり「テウタがクロちゃんに暗号の意味を聞いた」という結果だけが残ります。

輪るピングドラム」風に言うのであれば運命の乗り換えです。

故に、最初の疑問の答えを述べるなら、テウタの能力によって世界線が移動するため「変えられた世界」は元の世界と同一ということはないです。そもそもが前の世界線は消えてしまうので、「元の世界」という概念すらないかも。更に前の世界線が消えることにより「テウタから電話がかかってきたクロちゃん」も存在しないため、現在のクロちゃんは「テウタから電話がかかってきていないクロちゃん」です。そして、テウタが電話したのは世界線が移動する前と考えられるので、テウタが電話をかけたのは「前の世界線のクロちゃん」ということになるんじゃないでしょうか。

これで、テウタは時間を遡ったはずなのにクロちゃんにはテウタから電話がかかってきた記憶がない、という謎もうまく納得することが出来ます。

ゲーム本編の数少ない描写から導き出した答えなので、描写されていない部分で全く違う想定がある可能性もありますが、私が出来るのはこれくらいでした。

 がっつり考察するのって楽しいですが、やっぱりちょっと疲れますね。次はモズの√感想を書きたいので、彼の二周目ぼちぼちやっていこうと思います。

 

 

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